でも今は、この部屋に一日中閉じ込められている。部屋には外からしか開けられない鍵がかけられているから。

ガチャン、と鍵が開く音がする。私はびくりと肩を震わせ、ゆっくりと後ろを振り返った。ブランドのシャツとパンツを履いた男性ーーー三雲真斗(みくもまなと)さんが入ってくる。コツコツとこちらに近づいてくる足音ですら、怖い。

「颯空ちゃん、執筆はちゃんと進んでる?」

「あ、その……」

私が答えるよりも早く、真斗さんはパソコンを覗き込む。そしてあまり進んでいない執筆の様子を見て、「ねえ、何で書いてないの?」と私を睨み付けた。

「そ、それは……一日中この部屋にいるから、ストレスであまりお話が浮かばなくて……」

私がうつむきながらそう言うと、真斗さんは私の着ている着物の襟を掴む。着物がはだけてしまいそうなことより、真斗さんの顔が怖くて私の目から涙がこぼれていった。

「アハッ。いいね、その顔。すごく可愛い。いい?世の中の小説家はみんな一日中パソコンに向かって書いてるの。君みたいな何も知らない子に俺は世の中を教えてあげてるんだよ?」