囚われの小説家と使用人〜私の王子〜

二人の言い合う声が静かに響く。私がそっと目を開けると真斗さんと目が合った。

「颯空、こっちにおいで」

真斗さんは優しげな暗い目をして私に手を差し出す。その様子を葵さんは睨み付けていた。

「君はここにいるんだよ。君がいなくなっても誰も困らない。君を愛してあげられるのは俺だけなんだよ」

冷たいその目はまるで催眠術のように私の心を揺さぶる。ずっと真斗さんに怖い思いをさせられてきたせいか、従わなければならないのではと思ってしまう。

「私……」

どうすればいいかわからない。その時、「颯空ちゃん」と葵さんに呼ばれた。葵さんは優しい目をして言う。

「僕は君の選択を信じるよ」

その言葉と優しい目に、私は全ての答えが決まった。私は葵さんの両頬を包み、唇を重ねる。初めて自分からしたキスは何だか初めてしたキスと同じように不思議な感覚だ。

目を開けると、葵さんは顔を真っ赤にしていて胸が温かくなる。そして私は呆然としている真斗さんの方を向いた。