囚われの小説家と使用人〜私の王子〜

「ごめんね……」

「葵さんが謝ることじゃ……」

不意に謝られ、私は慌てて笑おうとする。でもうまく笑えない。ここに来てから笑ったのはいつだっけ?

「……ッ」

私はゆっくりと俯く。真斗さんはここにいないのに、葵さんがそばにいてくれているのに、笑えない。

「そうだ!今日の午後に見つけたんだけどね……」

葵さんがそう言い、部屋を出て行く。しばらくすると花瓶を持って笑顔で入って来た。透明な花瓶には立派なひまわりの花がある。

「綺麗……」

緊張していた心が少し和らぐ。夏を感じるひまわりに少しだけ心が癒されたような気がした。

「ひまわりって綺麗だよね。僕は花の中でひまわりが一番好きなんだ」

「私も、ひまわりが好きです。花が大好きで……」

葵さんの優しい表情に心が少しずつ解けていく。この穏やかな時間が永遠に続けばいい。でも、それは叶わない。

「葵、何してるの?」

鍵を開けっぱなしのドアが開き、低い声が響く。私がそちらを真っ青になった顔で見れば、真斗さんが冷たい目で睨み付けていた。