囚われの小説家と使用人〜私の王子〜

スマホは奪われてしまったので、助けを求めることはできない。監禁されているなんて信じてもらえないかもしれないけど、ここから出たい。

真斗さんは時々この部屋に来て、私がちゃんと小説を書いているか見に来る。きちんと書けていないと脅され、書けていれば頭を撫でられたりキスを頬にされたりする。私に好意を抱いているのは本当らしいけど、怖くてたまらない。

コンコン、とノックされる。この音がここに来てから怖くなってしまった。

「は、はい……」

私は涙を拭き、ドアの方を向く。真斗さんが入って来たのかと体を強張らせる。しかし、入って来たのは葵さんだった。

「葵さん……」

「食事を持って来たよ」

そう言い、葵さんはニコリと微笑みながら入ってくる。その手にはおいしそうな夕食がおぼんに乗せられていた。食事はいつも葵さんが運んで持って来てくれている。

「もう、そんな時間なんですね……」

ここにいると時間の感覚がおかしくなっている。私がそう言うと、葵さんは悲しげな顔をした。