「大丈夫。」




そう言い聞かせて家を出た私が、芽瑠の家に着いたのは約10分後のこと。



夏の昼間の、"徒歩10分"は暑さに圧倒される。



おかげで、胸の苦しみなんて忘れることができた。




「雪花、いらっしゃい~!」




芽瑠に迎え入れられて、私は屋内へと入る。



クーラーで冷やされた空気が涼しかった。




「雪花ちゃん!元気だった?」




その言葉と同時に、芽瑠と玲央のお母さんが姿を現す。




「はい。お邪魔します~。」




彼女にそう返した。




「もうちょっとしたら着付けしようね。今からやっても、暑いだけだから。芽瑠の部屋でゆっくりしてて~。」




「ありがとうございます。」




そんな会話をしていると、玲央がひょっこり姿を現した。




「雪花ちゃん~!好きだよ。」




「うん、ありがとう。」




木崎家のウェルカムサインはインパクトが強烈だ。



戸惑う私を救うように、芽瑠が私の手を引いて、自分の部屋へと連れて行ってくれる。