ここは私の通う高校のカウンセリングルーム。



陽平はスクールカウンセラー。



私はこの部屋の常連。




「で、何かあった?」




ミルク味のキャンディを堪能している私に、陽平はそう聞いてくる。




その質問を待ってましたとばかりに、私は陽平のアンバーの瞳を見据えて、キャンディを口の端に避けてから話し始めた。




「今日もいつも通りだった。机の中にラブレター入れられてたからゴミ箱に放り込んで、女子に陰口叩かれて、でも芽瑠がその女子たちを黙らせてくれて、翔吾に数学の課題手伝ってもらった。」





「うん。見事にいつも通りだね。」




陰口大好きな女子たちを黙らせてくれる、木崎芽瑠(Kisaki Meru)は、中学からの私の友人で、可愛い顔で毒を吐く強者。




数学の得意な、夏目翔吾(Natsume Shougo)は、私の幼馴染みで、何かと頼りになるお兄ちゃん的存在。





私が友人と呼べる人間はこの2人だけで、それ以外のクラスメイトたちとはほとんど喋ったことがない。




もうこの高校に通って3年目になるのに、不思議なくらいに交友関係が広がらない。




まあ、私はそれでいいと思っているけれど。