扉にかけられたプレートが『在室中』となっていることを確認して、ノックをした。




中から「どうぞー。」と軽い返事が聞こえたので、遠慮せずその扉を開ける。





グレージュの髪の彼は、私の姿を見るなり、




「やっぱり雪花だった。」




と言って笑った。





「陽平、聞いて〜。」





この部屋の番人である陽平に、私は躊躇なくマシンガントークを仕掛けようとしているところ。




陽平はそんな私にはもう慣れっこで、颯爽と扉の『在室中』のプレートを『面談中』に変えて、私に奥の相談室へ行くよう促した。




私がソファーに座ると、彼もローテーブルを挟んだ向かい側のソファーに座り、いつものセリフを言う。




「キャンディ、食べる?」




「ミルク味のやつがいい。」




「お、ラスイチだ。ラッキーだね。」




ケースの中からミルク味のキャンディを取り出して、渡してくれる彼。




それを開封して口に含むと、甘くて優しい香りと味が口いっぱいに広がった。