「お待たせ、雪花。着いたよ。」




そう私に言う陽平の纏う空気は、いつもの木漏れ日のような空気だった。



核心を突かれ、慌てて取り繕ったようにも見えなくはないけれど。



今だけは、その木漏れ日のような空気に騙されてあげよう。




「陽平、本当にありがとう。」




今日助けてくれたお礼を述べれば、陽平はまた木漏れ日みたいに笑う。




「雪花を助けるって言った言葉に、嘘はないよ。」




その言葉を発したとき、陽平の瞳に嘘はなく、本気だとわかった。




「うん。ありがとう。」




今返す言葉は、これしかない。



それ以上のことは言えない。




「またね、陽平。」




「またね、雪花。」




陽平の車が見えなくなるまで、私は見送っていた。