その沈黙を破ったのは、陽平の言葉だった。




「今日、皆から話を聞いたとき、もし俺が雪花を助けられなかったら、俺はスクールカウンセラーを辞めようかと思ってた。」




急に発せられた、真剣な話。



自分の一人称がいつもと違うことに、陽平は気づいているのだろうか。




「まあ、全部俺のエゴだけど。」




そう話す陽平の表情には明らかに翳りが見える。



この間見えたものと等しい翳りのように感じられた。




「雪花が初めて全てを打ち明けてくれたときから、絶対にこの子は俺の手で助けるって、そう決心していた。」




いつもより言葉数の多い陽平の横顔を見つめながら、私は今しか言えないであろう言葉を陽平に投げかけてみることにした。




「私の姿は、陽平の昔の恋人に重なる?」




邪推して導き出した、憶測でしかない言葉。




「その口ぶりだと、まるで昔の恋人を陽平が助けることができなかった……そう言っているみたい。」




信号待ちで停車中の車の中、陽平は少し驚いたような表情で私を見た後、ふっと、木漏れ日のように柔らかく微笑んで見せた。




「相変わらず、雪花は鋭いね。」




肯定も否定もしないその言葉が、私には肯定の言葉に聞こえた。