数学の教科書とにらめっこをしながら、頭を抱えるミディアムボブヘアの女子が視界に入る。



ああ、今彼女が味わっているその気持ち、わかるなあ。



私も数学は得意な方ではないし。



そして、彼女が次に放つであろう言葉もなんとなく予想がついた。




「翔吾~!ヘルプ!」




うん、予想通り。



私の前の席に座る翔吾は、芽瑠の言葉に反応して、そちらに目をやる。




「そのページの公式に当てはめる。以上。」




翔吾の答えはびっくりするほど淡泊で簡潔なものだった。



芽瑠の叫びと相反している。




「それがわからないから聞いてるんだけど。」




「そのまま数字入れるだけだろ。」




「答えが合いません~。なんで~?」




芽瑠と翔吾の言い合いは、翔吾の溜め息と同時に終了した。



諦めた翔吾は芽瑠の方を向き、ひとつずつ解説を始める。