スマートフォンの画面を見ると、ちょうど10時になったところだった。




私は駅構内の改札の近くに1人で立っている。




オフホワイトにブラックの小さな花柄が入ったワンピース。



足元は、ビジュー付きの黒のローファーと、ワンピースに色合いを合わせた履き口がメローのクルーソックス。



バッグは肩掛けできる淡いラベンダーのミニバッグにした。




「あの、ユキさん?」




声をかけてきたのは、どこにでもいそうな20代の男性。




私は微笑んで、




「はじめまして。」




と彼に言った。




すると彼は、少し安心したような表情を浮かべる。




「可愛いですね。」




「敬語外して?私はあなたの彼女だもの。」




今日だけは、ね。




「行こ?」




彼の腕に自らの腕を絡ませ、私は言った。




一瞬、彼は少し驚いたような表情をしたが、




「うん。行こうか。」




と返事をしてくれる。