そんな教え合いをしているうちに、チャイムが鳴って、自習の時間が終わる。
とても有意義な自習時間だった。
私達3人の間には穏やかな空気が流れている。
「姉ちゃーん!」
そう、その聞き覚えのある声が聞こえてくるまでは。
真っ先にその声に反応したのは芽瑠。
彼女が声のした方に目を向けるので、つられて私と翔吾もそちらを見た。
色素の薄い瞳と髪色、横に流した前髪、整った顔立ち………私達のよく知る人物が、ズカズカと教室に入ってきているところだった。
そのまま彼は芽瑠のもとにやって来て、
「姉ちゃん、体操服貸してー。」
と、芽瑠に言う。
そう、彼は芽瑠の弟……木崎玲央(Kisaki Reo)。
今年入学してきたばかりの1年生だ。
3年生の教室にズカズカと入ってくることができる新入生なんて、彼くらいだろう。
きっと将来は大物になる。