「お前、何か好きなことある?」
担任の先生はそう聞いてくるけれど、今私が思いつくのは、隣の彼のことくらい。
興味や関心のある分野はあるか、という意味の質問だろうし、それには相応しくない答えだ。
私は首を横に数回振るしかできなかった。
「英語は得意だよな?今回の模試でも、学年1位だ。」
「得意なだけです。」
「それを極めるのも1つの選択肢だ。」
わかってはいるけれど、極めた先の将来をどうしたいかまで考えなければならないのがこの面談の主旨。
「外国語系で、とりあえず教職課程のあるところを選んでおいて、その道に進むかどうかは入学してから決めるっていうのが、今の瀬名には妥当かもしれない。」
何をしたいのかがはっきりしないから、得意分野で、なるべく選択肢の多い道に進んでおく……、恐らくはそういう意味だろう。
私だって、今すぐにはっきり決めろと言われても困るし、そっちの方が助かる。