「じゃあ、おまえだったらどうする?」 “おまえ”じゃなくて、日南(ひなみ)って呼んで欲しかった。 冷たくて冷たくて、優しくて、苦しい。 「わたしだったら...」 言いかけて、全てごくりと飲みこんだ。 仁科の空気とわたしの空気が溶け合った空気といっしょに、飲みこんだ。 「わたしだったら、どうもしないよ」 「なんだよ。つまんねーの」 小学生の仁科は、プロフィール帳の『もしも魔法が使えたら』の三つの欄になんて書いたんだろう。 いまの仁科の言ったことと同じことを書いたんだろうか。