それは川に架かる長い橋の側に
差し掛かった時。

まぁ、折角だし夏休みの思い出と
して収めとくか。
ポケットからスマホを取り出し

カメラアプリを起動させる。
そしてズームして被写体を決めようと
狙いを定める。



「シャー。」

シャッターを切ろうとした時、
狙いを定めた位置に猛スピードで
自転車が横切り、目が合う。

時間にしたらほんの数秒。
しかし、まるで時間が止まった様に
スローモーションに感じられた。

前髪から覗く切り長で光を宿した
綺麗な目、通った鼻筋、形の整った
薄い唇、男の人を感じる完璧な
フェイスラインに垂れる汗。


目が合った彼は恐ろしくまさにイケメン。
いや、イケメンなんて言葉で収拾を
付けてはいけない程綺麗な顔で。


「カシャッ。」


シャッターが切られた瞬間、


心無しか怪訝そうな表情をされた様な
気がした。


「うわっ。ブレブレ…」


カメラロールに自動で保存された
写真は案の定、自転車に乗っていた
彼の躍動感漂う1枚となった。


(こんな格好良い人田舎にもいるんだ…。)


そう、心の中で呟きながら

再び外に視線を移した。

見慣れた景色。

この長い橋を越えたらもうじき
おばあちゃん家だ。