ゆめゆあ~大嫌いな私の世界戦争~

 15

 体育館に行った。
 屋上からポリタンクを下ろして運ぶ。
 ドアは施錠されていない。
 中に入った。
 誰も居ない。
 冷たいフローリングの床。歩く度に上履きが擦れてキュッキュッと音がする。
 舞台の方へ向かって歩いた。
 ここが私の一世一代の檜舞台。
 階段を登って舞台へ上がった。
 閑散。
 静寂に少し身震いする。
 ポリタンクを重ねてピラミッドを作って遊んだ。
「ピラミッドはファラオの墓標だもんね。ぴったりじゃんか」
 これは私の墓標。
 でもファラオみたいに歴史には残らない。
――がやがやがやがやがやがや。
「おい! 何やってるんだ!」 
 何人もの大人が入ってきた。
 さっきの警察官が二人。
 教頭の水野先生。
 三年生の学年主任の堀兼先生。
 三年二組担任の大楠先生。
 みんな恐い顔をしている。
「こんなことやめなさい!」
――ダダダダダダダダッ。
 勢いよく近づいてくる。
 足音がうるさい。
「来るな!」
 私は能力を使いみんなをなぎ払った。後方へ吹き飛ばされ尻餅をつく。
「近づくな!」
 一瞬にして見る目が変わる。
 私を畏怖するような、そんな顔。
「私には力があるんだ。見ての通りだよ。先生たちじゃ、私を止めることは出来ないよ」
 能力を使い床を何度も叩いた。
 激しい衝撃。
 轟音と共に床に穴が開く。
「あ……」
 先生たちの信じられないといった顔。
 警察官は見てるだけ。
 逮捕なんてされない。
 私は無敵だ。
「みんなを殺すくらいわけないんだからね」
 これから体育館に全員を集め、一人ずつ殺していく。
 その後でみんなの死体と共に燃えて死ぬ。
 それが私の人生の最後。
「わかったらちゃんとみんなを誘導してきて下さい」
 ニコリ、と微笑みかける。
 あれ?
 私こんな笑い方できたんだ。
 そっか。
 もう死ぬって決めたから?
「あ、雨宮さん。落ち着いて。話しを……」
 教頭の水野先生が言った。
「うるさいな。いいから連れてこいよ」
「あ、雨宮さん」
「連れてこい!」
 そう言って大楠先生を能力で掴んだ。
 空中に持ちあげて体を縛り上げる。
「あぐ……」
「あの日私の家に来た時、先生たちもどうせ私が犯人だって思ってたんでしょ!」
 あの日の先生たちの、しらじらしい笑顔や、穏やかな態度にイライラした。
「ゆっくりでいいから頑張りなさい」
 なんて嘘。
 本音は私を見下してる。
 そう思えて仕方なかった。
「みんな嘘ばっかり! 偽善者! 学校なんてほんと嫌い! 大嫌い! みんな死んじゃえばいいんだ!」
 大楠先生を強く締めあげた。
 苦しそうな表情で悶える。
 肺が圧迫され呼吸が出来ない様子。
 そのまま死ねばいい。
 虐めをみて見ぬフリしてきた罰だ。
「先生が……、もっといい先生だったら、私の人生だって変わったかもしれない。私が虐められてたこと、知らないわけないよね? でも先生は、知らんぷりしてた」
「はぁはぁ……、あ、ぁぁぁぁあ」 
 先生は息が苦しそうで話すことが出来ない。
「なんで? どうして? なんで先生は私を助けてくれなかったの?」
「はぁはぁはぁ……、あ、ああぁぁ」
 返答はない。
 とても答えられる状態じゃない。
 だけど答えは要らない。
 そんなこと、もうどうだっていいんだ。
「あ、雨宮さん! やめなさい。死んでしまう」
「はぁ?」
「こ、こんなこともうやめるんだ」
 教頭先生が言った。
 うるさいな。
 私に口答えするな。
「やめる? やめるわけないじゃんか」
 能力を使い学年主任の堀兼先生と、警察官たちを弾き飛ばした。
 三人は後方へ吹き飛ばされ、壁に激突。
 もの凄い音がして壁にめり込んだ。
「あ、あぁ……」
「何度も言わせないで。私は、力があるの。先生たちじゃ私は止められない。余計な手間をかけさせないで」
 私の力は無敵の力。
 他の人には見えない手を使い何でもできる。
 馬力は百万馬力。形は変幻自在。
 ただの人間が束になってかかろうとも、私には勝てない。
 私は最強なんだ。
「はぁはぁはぁ、ぅぅ……」
「ほら、早くみんなをここに集合させて下さい。そうしないと、大楠先生死んじゃいますよ」
 大楠先生は今にも息絶えそう。
 顔が青白い。
 壁にめり込んだ三人も意識消失。
 頭や体から出血もある。
 放置してたら死んでしまいそう。
「全校生徒全職員、早くここに集めて下さい」
「し、しかし……」
「うるさいな! 早くしろよ!」
「ぐあぁぁぁぁ!」
「わ、わかった。言うとおりにする」
 教頭先生が両手を前に出して言う。
 慌てふためいた顔。
 私が恐い。
 私には逆らえない。
「じゃあ早くして」
「わ、わかった」
 そう言うと教頭先生は勢いよく走りだす。
「お願いします」
 先生が居なくなると私は舞台袖に行く。
 大楠先生は縛り上げたまま。
 このまま死んでも別にかまわない。
 舞台袖の放送室へ入る。
 これからみんなの前で話すことがちゃんと聞こえるかどうか心配なのだ。
 だから体育館の放送機材を使って喋ろうと思う。
 私は声がちいさいから。