「最近彼氏がさぁ〜」

あぁ、私、なにやってんだろ。

作り笑いで親友の恋人の愚痴を聞く毎日。愚痴かと思ったら惚気だし。

「桃も早く彼氏作りなよ!」

親友の話はいつもその一言で締めくくられる。

私、中村 桃(なかむら もも)は現在高校二年生なのにまだ彼氏がいたことがない。告白したことも、されたこともない。

特別可愛いわけでもないし、目立つタイプでもない私。だから、男の子は私なんて見ていないんだ。

私の小学校からの親友、さやかは可愛くて派手で目立つから、周りに人が絶えることがない。彼氏もずっといるんだそう。

私とは大違い。どうして親友なんだろうって、たまに思ってしまう。

けど、さやかのことは大好きだし、さやかも私といると楽しいって言ってくれる。さやかは可愛いだけじゃなくて、いい子なのだ。男の子が放っておかないのも納得できる。

私だって恋愛に興味がないわけじゃない。

彼氏と放課後デートだってしてみたいし、休みの日に2人っきりで出かけたりもしたい。そういうありきたりなことに憧れている。

でも縁がないみたい。男の子は誰だって、私とさやかを見るとさやかに恋をする。

さやかを恨んだことはない。恨んだところでどうしようもないし。容姿が変えられるわけじゃない。

いつか、さやかじゃなくて私のことを見てくれる人が現れるって、そう信じている。今はそれだけで十分だった。