夜が明けてきた頃…




トーマ様の手が、ぴくっと動いた。



私は、はっと顔を上げ、

「トーマ様!トーマ様!私です。リリアです。わかりますか!?」

大きい声で、呼び掛けた。



トーマ様が、ゆっくり目を開けた。

「ここは…」

よかった!

本当に、よかった。

再び、私の目から涙があふれだす。



「トーマ様、気が付いたんだね。ここはトーマ様のベッドだよ」

私は、トーマ様を優しく見つめる。



トーマ様は、起き上がろうと力を入れる。

「痛っ」

「だめっ トーマ様、まだ動いちゃダメだよ。傷口が開いちゃう」

それを聞いて、トーマ様は、

「あぁ、そうか。そう言えば、怪我したんだったな」

と、少し笑った。



「笑い事じゃないよ!私が、私が…どれだけ心配したと思ってるの?」

涙が止まらない。

「ごめんな。心配かけて。ただいま、リリア」

トーマ様が、そっと腕を伸ばし、涙をぬぐってくれる。

「おかえり」

また、涙があふれた。



良かった。


このまま、目を覚まさなかったら、どうしようかと思った。

そんなの、私には耐えられなかった。

本当に良かった。