「内緒です」

と、とっさに誤魔化してみた。


「内緒なのか…」

と、トーマ様は、つぶやいている。

せっ セーフ…

ふぅ…危なかった。

トーマ様に、私の気持ちが、ばれてたら恥ずかしすぎるよー。




ん?ちょっとまって。

この流れだと、今、同じ話題をトーマ様にふっても、おかしくないよね?

聞いてみる?

今しかないよね?

絶好のチャンスだよね?

えーい!

「トーマ様こそ、どうなんですか?好きな人とかいるんですか?」

きゃーっ

言っちゃったよー

勢いに任せて聞いちゃったよー

普段だったら絶対無理。

今の、この穏やかなムードだからこそ、聞けたみたいなもんだ

なんて返事くれるのかな?

というか、返事してくれるのかな?

エリザベス姫には、確か昔から好きな人がいるって言ったんだよね?

ドキドキ…




「いるよ」

大好きなトーマ様の、澄んだ声が聞こえた。

あぁ、やっぱりいるんだ…

わかっていたことなんだけどね。

本人の口から聞くと、やっぱり、「ずしん」と胸にくるね…

「そうなんですね!トーマ様はカッコいいですから、きっと両想いになれますよ」

と、私はテンションを上げ、落ち込んでるのを誤魔化した。




トーマ様は、ふっと笑い、もう1度こっちを見た。

「うん、いるよ。ずっと前から好きな人がね」

トーマ様は、じっと私を見つめている。

へ?

いや、私は4月に出会ったばかりで、

まだ4ヶ月しかたってないし。



…。



ひょっとして、トーマ様と前に会ったこと…ある?

まさか…

二人で見つめあう。

徐々に、顔が赤くなってくる。

トーマ様は無言で、私を優しく見つめている。

私は、だんだん恥ずかしくなってきて、視線を外した。