会場を出たものの、なんだか部屋に帰る気も起こらず、私は屋上に向かっていた。




ここは、トーマ様との思い出の場所。

今日も星が、とても綺麗だった。

でも、トーマ様と一緒にみた星は、もっと綺麗だった。

トーマ様と一緒にいると、全てが輝いて見えた。




今ごろ、トーマ様は、エリザベス姫の部屋に向かっているのだろうか?

私は、椅子に座り、机にうつぶせた。

トーマ様…会いたいよ。



コトン

すぐそこで、音がする。

びっくりして振り向くと、そこには一匹の猫がいた。

誰かが飼っているのだろうか?

とても人懐こい。

ゴロゴロ喉を鳴らしながら、足にスリスリしてくる。

私を、なぐさめてくれているの?

にゃあ~

猫は、可愛い声で鳴き、どこかへ行ってしまった。




再び、静けさが広がった。



遠くの方で、ガヤガヤ人の声や、笑い声が聞こえる。

きっとまだ、みんなは会場で、楽しくおしゃべりをしているのだろう。

私は再び、机にうつぶせた。



耳を澄ますと、夜の風の音が聞こえる。

ひんやりした風が、気持ちいい。

扉が開く音がした。



チチリさんが、捜しに来てくれたんだろうか?

私は、ゆっくり顔を上げた。

そこには…

トーマ様が、立っていた。