街を歩けば、この悪魔めと言われ、石を投げれる。買物をすればお前さんには売りたくないんだが、こっちも商売だと言われ、通常の値段の三倍を言われる。

 助けられた貴族たちは怒りの矛先がアリシアに向いていることをいいことに傍観し、せせら笑うのだった。

 それを見かねたエルザが仲裁に入るも国民に声が届くことはなかった。
 エルザはアリシアに他の街で暮らすことを提案して持ち掛けたのだった。

 アリシアの瞳の色に生気はなく、誰の目から見ても精神に異常をきたしているように見えた。事実、アリシアの精神は細い糸一本で繋がっているような状態になっていた。何を言われても深々と頭を下げる。「ごめんなさい」という言葉に感情の起伏が見られない。額に投げられた石がぶつかり滴り落ちる血液を見ても動じないアリシアを見て、アリシアは痛みを感じていないんじゃないかとエルザは思ったのだった。