山々が連なりその中心に綺麗な湖があった。その湖の畔にアリシアは小屋を建て一人暮らしをしている。小屋の外観は立派とは言えないが雨風を凌ぐには事足りるといったところだろう。

 終戦の後、聖女と謳われた少女は戦犯のような扱いを受けた。もし敗戦という形であの無意味な戦争が終わっていたならば少女は間違いなく国民に差し出されていたかもしれない。

 奇跡の魔法は国民にはもたらされる事はないと遺族が嘆く。心無い罵声がアリシアに浴びせらる。ある者は勝手なこと言う。噓つき。悪魔。ケダモノ。息子を返せ。娘を返せ。旦那を返せ。アリシアは何を言い訳する事なく罵声を受ける。

「ごめんなさい、助けられなくてごめんなさい」
アリシアは深々と頭を下げるも国民の怒りは収まることを知らない。出ていけ。街から出ていけと罵られる。

 アリシア自身も助けられなかったという思いがある。目の前で見捨てた事実もある、それに養父を亡くしたことが何よりも心を深く傷つけていた。