中でも記憶に残っていると言えば聖女と言われた少女が頭をよぎるのではないだろうか。
金糸の髪色。青く澄み切った瞳。白磁のような肌。人形かと思わせる顔。青色のドレスの上に甲冑を着込み、腰にソードを帯びて、戦った少女。齢15にして数々の戦場を転戦し、奇跡の魔法を行使した。名をアリシアといった。

 国民はその少女の行使する魔法を奇跡の魔法と称して聖女と崇めた。

 世界で唯一の治癒魔法。

 どんな怪我もヒールの一言でたちまち癒す奇跡の魔法を行使しする姿はまさに聖女そのものに国民の目には映った。少女の美しい見栄えも聖女として呼ぶにふさわしいとさえ国民は賛美した。

 この魔法があれば誰も死なないと思い込んだ。

 熱気の冷めやらぬ中で我が子を送り出す母親。聖女とともにいれば死ぬ事はないと疑いを持たない。信仰にも近い気味の悪い何とも言えない空気が国中を漂っていた。