パン屋さんを出て、数件歩くと目的の家に着いた。

「実はここ、奥さんを口説き落とすために賃貸にしたんだ。
元々は、お年寄り一人で住んでたんだけど。
空き家になったから、近所のよしみで頼んだの。
そして見事に彼女をゲット!
奥さん………可愛いでしょ?」

そう言うとウインクを一つ寄越した。

普通だったら、キザっぽくなるしぐさだけど

彼がすると……自然に見えてしまうから不思議だ。

何処か浮世離れしたパン屋のお兄さんを不思議に思いながら

玄関のドアを開けると、幾つかの靴が並んでいた。

……………多くないか??

勝手知ったるで、ドンドン進む
パン屋のお兄さんに着いて上がると

リビングとは言いにくい

懐かしい畳敷きの和室に

男達が、テーブルを囲んでいた。

「おう、お疲れ!
直ぐ分かった?」

尚人の声に視線を向けると

隣に澤先生も座っていた。

「こんにちは。
今日は、お世話になります。」

挨拶する俺に

「固い挨拶は良いから
先ずは、座って座って。」

「イスじゃないから
地べた座りで悪いけど。
洋ちゃんも時間良い?」と

居るはずのない男達に声を掛けられる。

この人達は??

疑問を浮かべながら腰を下ろす俺に

「この人達、俺の仲間で
コタ……
澤先生のお友達。
紹介は、主役の子が来てからね。
まだ、一人来てないから
一旦店に戻る。
じゃあ、また後でね。」

俺と他の人にそれぞれ説明して

パン屋のお兄さんは、出ていった。

………そう言えば

藤堂がまだだった。

緊張し過ぎて、肝心の事が抜けてた……。

担任にあるまじき行動を反省してたら。

「この隠れ家、良いでしょう?
ここだと、少々騒いでも大丈夫。
寂れた商店街の
これまた寂れた一軒家だからね!
お兄さん
ナオ坊と同じ学校の先生なんだって?
年も一緒?」

俺とそんなに変わらなそうな

イケメンホストのようなお兄さんに
話しかけられる。