「コタ達は、彼女の住んでた家にいるから………案内するよ。
パンは、これで良い？」と言うと

パンを袋に詰めてくれていた奥さんから受け取り。

さっさと入り口に向かう。

「………あの。
お金が………まだ…………。」

レジを済ませてない事を伝えると。

「あぁ～
大丈夫大丈夫！
気にしなくて良いから食べて。
あっ、彩。
ついでだから、もう何個か詰めて。
コタ達にも、差し入れる。」と

詰めた袋を奥さんに返すと

手際よく、幾つか選んで袋に入れて

一緒に持たせてくれた。

「あっ、でも………申し訳ないので……。」

買うつもりで、取ったパンが

かえって迷惑をかけてしまった…………。

恐縮する俺に。

「久しぶりに、パンをもらって恐縮する人に会った。」と言って笑い。

「彩………あっ、奥さんなんだけどね。
この近所で幼稚園の先生をしてたんだ。
今は、辞めて店を一緒にやってくれてるんだけどね！
その幼稚園の先生達が、夕方になると押しかけてきて
当たり前のように、自分好みのパンを持って行くから………
恐縮する姿が新鮮で………。
今でも遠慮するのは、園長夫人になった女の子一人だけなの。
その子も忙しくなって、滅多に来ないから珍しくなって………。
気にしなくて良いよ。
食べて美味しかったら、次に買いに来て。」

そう言うと、袋いっぱいになったパンを持たせてくれた。