檸檬が欲しい

【緋緒side】

ディスプレイ誰にも見られてないよね?

バイブレーションが止まらないスマホには“市谷先生”の4文字。



何でこんな時間に電話を?



屋上にある塔屋の壁に寄り掛かる。

教師に隠れてスマホをイジる時の特等席だ。



「……もし、もし」

『急に電話して悪かったね。今は家で休んでるのかな?』

「いえ、今は学校にいます。」

『学校?……嘘だろ?あ、大丈夫なのか?』





「辛いけど、行かなきゃダメだと思って」

“良い加減にしろや!!!”


甘えてはダメ。

この状況から抜け出すなら叔父も関係ない。


私は何時迄もこのまま甘えては駄目だと気づかせてくれたから。




『そ、そうなんだね』


「昨日はありがとうございました。それで話しはそれだけですか?」


『ううん、今日の夕方は会えるかな?』





_________?!


「先生こそ大丈夫なんですか?」

『僕の方は平気さ』



__じゃあ、いつもの所に迎えに行くね。




先生も仕事があるはずなのに。


私のこと気にしてくれるのは有り難いけど、このままでは先生にまた迷惑をかけちゃう。






『どういうことよ?!何がダメだったの??』



____??!


私より先に屋上に誰か居たの?
気づかなかったーー



『何がってそもそも、僕と君はそんな関係ではなかったはずだけど』


『そんな!だってサクラくんいつも私に優しくしてくれてたじゃん!』





朔羅くんって______
こっそり壁から顔を出して二人の男女を覗き見する。

やっぱり 矢神朔羅 だ。

クラスメイトであり、学校中の女子の話題を独り占めするような男だ。



『誰がサクラって呼んで良いって言った?』

『ご、ご、ご、ごめんなさい』

話し掛けられたすべての人に愛想よく接するのが矢神朔羅だ。

そんなイメージを覆すほどに冷酷

相手の女の子は恐れたのか逃げるように帰ってしまった。










マズイ

隠れなきゃ


「藤宮さん、立ち聞きは駄目だよ」


バレてた??

「わ、悪かったわ」

「いいよ、君が屋上に途中から来てたのはわかってたのにあの子が暴走したのが悪いし」


暴走って__

女子に愛想振り撒いている男の発言とは思えない。

気まずいし、逃げよう。






_______あっ、


まさかの段差に躓いた


ウソっ?





やばい、地面にぶつかる!!