檸檬が欲しい




空はもうすっかり暗くなったのに街はネオンに照らされて昼のように明るい。
人工的な光は目がチカチカする。


僕達より半歩前を歩くとみどりさんは複雑そうな顔をしながら振り返る。



「家政婦の身から言うのもですけど緋緒ちゃんの様子を見守って欲しいの」


「見守る、ですか?」


「詳しくは私の口からは言えないけどあの家も色々とあってね。あの子が小さい時から通っているけど、私にも家庭があるから夜遅くまでは居れないの。

それでどうやらあの子ちゃんと眠れてないらしいの。」


「眠れてない?」

「えぇ、お医者さまが言うには一種の病らしくて」


睡眠に関わる病なら不眠症とか睡眠障害だろうか。

どっちにしろ只事ではない。



「なんで僕たちにそこまで話してくれるんですか?僕たちはただのクラスメイトですよ」



僕と彼女に至っては出会ってから二週間しか経ってない。

彼女の事情を知る資格なんて、ない。


「周りの環境から私を含めて誰もあの子のことを叱ってあげれなかったの。
だからさっきの緋緒ちゃんの言葉にビックリしたわ。あなたはあの子のことをちゃんと向き合って叱ってくれたのね」


_だから、あなた達ならあの子のことを任せるのかと思って。

続ける言葉に重みを感じる。




「わかりました。できる限りですが彼女のことを見守ります    
   
 2人で」



おい、巻き込むなよ

ボソっと何か言われたような気がしたが気にしない。


僕にとって鳴瀬くんはまだ怖い人ってイメージだけど悪い人ではないと信じているから。