檸檬が欲しい



「蛍くん、神妙な顔つきだね。どうしたの?」

「あ!いや、大丈夫だよ!」


こっち祖母は父方の厳しい祖母と大違いでこの心地良い優しさが未だ慣れない。



「そうかい?一人で抱え込んでは駄目だよ。其れは自分を苦しめることに繋がるからね」


「うん、気をつけるよ。おばあちゃんも折角の一人部屋だからゆっくりしてね」


父さんが義母が入院したと聞いてから直ぐに病院に問い合わせて一人部屋を用意したらしい。

病院の一人部屋は凄いなぁ

大きい窓は街を見渡せる程だし、広めの一人用ソファが二つ。

ベッドからドアまでかなり距離がある。


「其れより、おじいちゃんと美紀ちゃんは大丈夫かしら?」

美紀は母さんの名前だ。



大丈夫かと訊かれたら母は仕事を探そうとせず毎日ショッピングだし、祖父は寂しく囲碁や将棋ばかりである。

2人とも家事が得意ではないから僕が料理をすることも屡々(しばしば)


でもそんな状況を入院中の祖母には言えない。


「大丈夫だよ、2人とも頑張ってるよ。」


「そうなのね。甘やかし過ぎたことを心配してたけど、美紀ちゃんも嫁いでから頑張ったのかしら」



ごめん、おばあちゃん。
母さんの得意料理は目玉焼きです。