「ほんとに来たんだ」
あたしを見つけると、ニコニコしながらこちらに歩いてくる男。
1年ぶりに会ったけど、何も変わっていなかった。
さっきまでバクバクしていた心臓は、きゅうっと締め付けられていて、少しの間息をするのを忘れた。
もっと、太ってればいいのに。
髪の毛も短く切って、もう、そんな人懐っこそうな顔、あたしに見せなければいいのに。
「来てって言ったのそっちじゃん」
「ほんとに来てくれるとは思わなかったもん。どうぞ、席案内する」
そのまま、奥のテーブル席に案内してくれた。
「また、決まったら呼んでね」
「うん」
変な顔、してなかったかな。
机の上のメニューを開きながら、まだきゅうきゅう鳴っている心臓を落ち着かせる。
「元カレ見て、キュンキュンしないでよね。喜咲、東京に彼氏いるんでしょ」
「キュンキュンてゆうか、見た目がさ、タイプすぎて」
「こらこら」
あたしだって、1年ぶりに見た元カレにこんなにやられると思ってなかったよ。
でも、前と何も変わって無さすぎて、全部一瞬で戻ってきたみたいな感覚に襲われて。
大好きだった頃の事思い出したら、冷静にはいられない。
そんなに大好きだったのに、
あたしは東京に行くことを選んだし
遠距離もしなかった。
、、いや、できなかったんだけど。
お前が東京に行くのが悪い。
何度このセリフを言われたか。
あの男の名前は工藤。
あたしより4つ年下の元カレ。

