彼がゆっくり振り返る。その足は私の方へ向き、歩みを進めた。
気づくと目の前に朔、向き合っていた。
「ちゃん付けはやめろ」
私の頭を軽く小突いた。その少しいたずらな表情に私の鼓動は強まる。
「はあ、、、」
わざとらしい大きなため息。朔は私の眼をまっすぐに見る。思わず逸らしそうになるが、口一文字に引き締め応える。
「おいで、澪」
朔は両手を広げ私の名を呼ぶ。私はその声に、その両手に、引き寄せられるように歩み寄る。
気づくと私の背中には両手が周っていた。力強く、そして優しく温かく。私を包み込んでくれていた。



