店の雰囲気に似つかないジョッキに注がれたビールが出される。それを半量程度一気に呑んでしまうのだから、私もこの店には似つかないだろう。
いつ振りかのビールはとても艶やかな通りで私の味覚を刺激した。

「相変わらず良い呑みっぷり」
「ほう、ありがとう」
「褒めてはいないが」

一品、また一品と少しずつテーブルの上に料理が並べられる。いつでも食べてください、と言われているかのような煌びやかさがある。



ーカランー

扉から音がした。不意にその方へ視野を向ける。男女の客のようだった。外からはあの匂い。

「「、、、ペトリコール」」

私がそう呟いたのと、彼が呟いたのはおそらく同時だっただろう。彼はそれに気づいたのか、気づかなかったのかわからないが、一瞬だけ目が合う。