夜明け前――美しい青がどこまでも続く空を、少女と見上げる。遠くまで見渡せる丘の上は、ユリの花で白雪色に染まっている。


 知っているはずなのに。物語の結末を。
 それでも、少女は愚痴ひとつ言わない。


 それなのに。なぜ、笑えるのだろう。


 困惑する少年と、どこまでも明るい少女。


 不安に揺れるのを見透かしたように、少女は優しく笑いかける。



――大丈夫。夜には月の灯(ランプ)があなたを照らして、朝になれば太陽の灯(ランプ)があなたをあたためてくれるから。


 まだ不安?


 なら……はい、これあげる。


ーー綺麗でしょう? 魔王様の瞳と同じ色なの。


 なんで? ふふっ、だってわたしの大好きな色だから。




 夜が明ける。淡い光の中で、漆黒の長い髪をなびかせながら少女は微笑む。