ビクッと手が止まる。
顔も上げられない。
ガタッと音がなり、湊がこちらに来るのが分かる。
それでも俯いてると、私の手にある止まったままのナイフとフォークを抜き取り、置いた後、そのまま私の両手を湊の両手が包み込んだ。
「伊織」
私の手を包み込んだまま、湊は私の側に跪いた。
視線を向けるよう、そしてそらさせないように頬に手を添えられた私
目が合えば、優しい顔で湊が笑った。
「好きだ。」
「気づいたら目で追ってた。…たぶん最初の、伊織が俺の腕で幸せそうに寝てた、あの時に惹かれたんだと思う。」
「伊織が背負ってるものを取り払うことは俺なんかじゃできない。……でも、頑張っている伊織を甘やかしたい。抱きしめたい。」


