「…調子にのらない方がいい。」
予想が当たって視線を上げられなくなる。
「宮本はうちのエースだ。余計な気持ちを持たせないでくれ。バレーに影響する。」
反論したいけど、
すべきじゃないし、できない。
「実績のない君の思考に沿った考えに多くが賛同しているが、次のワールドカップ 結果が残せなければ即退席願うこと忘れてないよな?」
コクリとうなずく。
その話を知ってると言うことはこの人は、
私のお目付役なのだろうか。
私が入ってすぐ招集されたってけんくん言ってたような。
「こちらとしては、宮本さえ調子が良ければなんでもいい。なんなら、調子が良くなるために君が支えてくれてもいいんだがな。文字通り身体で。」
まとわり付くような視線に変わって、
気持ち悪さで逃げ出しそうになる。
震える拳を強く握りしめた。
悔しい。
この人は祐真さんを何もわかってない。
祐真さんはバレーに誰よりも真摯だ。
それに祐真さんだけが調子良ければいい?
ふざけんな。
唇を噛み締める私に続けて言う。
「まぁせいぜい女を使ってみんなのモチベーションでもあげるんだな。木村も部屋に通ってるようだし、案外もう「あれ、あお?」」
聞こえてきた声に2人して振り返る。
…祐真さん。
「っち、じゃあ忘れるなよ。」
小声で祐真さんに聞こえないように言った彼は、
祐真さんに笑顔で挨拶してその場を離れる。
「祐真さん、どうかしました?」
「あお、そっくりそのまま返すけど。」
強い瞳にはメラメラと揺れるものがあって。
…怒ってる。