最低限開かれたフロアの扉から顔を覗かせた彼女はあの時の彼女だ。
初めはファンの人が紛れ込んだのかと思ったけど、
隣にいた健さんが声をあげたのをみて、
あ、そういえば今日妹さんが来るとか言ってたな…と考える。
健さんの妹さんだったのか…
ストレッチをしながら、彼女のそばに行こうとする健さんをみているとその方向に別の先輩が打ったサーブが飛んでく。
「危ない!」
思わず出した声で、
彼女はボールに気づいたみたいで、
コートの枠内に収まるようにミートできなかったとは言え、
日本のトップ選手の打ったサーブを、
緩いパスのボールを取るかのように、
軽くレシーブしてボールを手に収めた彼女に驚く。
みんなもそれに驚いて寄っていくから健さんの周りに人だかりができる。
…俺は遠くからそれをみる。
ストレッチの続きをしながら耳をすますと、
忘れ物を届けにきたみたいだ。
わざわざ他県から?
そう思ってると健さんが彼女に少し体を動かさないかと声をかける。
…まさかコートに彼女を踏み入れさせる気?