「は?」

俺の低い声に、健さんは苦笑いして、

「気持ちはわかるけど落ち着け。ほら、行くぞ?…まぁそれで莉緒本人は忙しいし、気にする時間もないって感じだけど。でも絶対めちゃくちゃ心に来てると思うんだよなぁ。」

再び歩き始めた足がまた止まりそうになる。

「…泣いてた?」

「泣かねーよ、むしろこれを俺に託して今日も5時くらいから勉強始めてたわ。」

泣く余裕もないくらいやること山積み…なのか。

託されたというものを俺の手に渡す健さん。

ノート?

中を見ると、木村くんのデータがぎっしり。

食事や身体作りのアドバイスのコメント付き。

…俺のメニューとまた違うのが本当にあおが本気で考えてる証。

「…これを?」

「向こうの学校の顧問に電話したから郵送しといてって。本当は住所とかの送り状までつけて包装してあったけど気になったから開けて持ってきた。」

笑いながらいう健さん、え、こわ。

勝手にこの人あけたの?

「勝手にあけたの?」

「いーじゃん。ことの発端は、あいつが俺が巻き込んでしまったのに莉緒のことコネとかなんとか言うからだし。」

妹への愛、こわ!

でも、それだけじゃないんだろうな。

健さんも悔しかったであろうことは顔を見ればわかる。

「で、どうするんですか。」

「…今日渡しに行かね?」

この人の行動力…

本当よく似た兄弟だと思う。

すごいいいこと考えたって感じの健さんに苦笑いする。