「誰。」
「私の今回の目的の人です。」
食い入るように、またあの全てを見透かすような目で画面をみる彼女に少しモヤモヤする。
「…あお。」
名前を呼んでも、もう彼女の意識はここにない。
「…ずるいなぁ。」
そう呟くのに反応して笑ってくれるのは健さんだけで、
1番反応してほしい当人はもう彼女のイメージの中。
「健さーん、お宅の妹さん冷たすぎません?」
健さんに不貞腐れて構ってもらおうとすると、
「ね、祐真さん、見てください、これ。楽しみですよね。」
あおが不意にすぐそばに来て、
画面を見せて嬉しそうにそう言う。
…近い。
「…確かに楽しみだけど…そんなに興味あるの?」
嫉妬心だらけの俺に、
「はい。まぁでも1番見ててワクワクするのは祐真さんですけど。」
と視線も合わさずにタブレットを見ながら言うから、
ほんと、ずるい。
「健さん…もうこの前言ったの現実化してるよー」
「ほんとな。お前、心許すとすぐ甘えたタイプになるからな。」
楽しそうに笑う健さんに、
笑い事じゃないですよ、と心の中で返す。