この合宿で、
彼女の偉才はとんでもなく発揮されていて、
チームは本当に日に日に良くなっていってる。
頬についた傷も隠して、
毎日夜遅くまで勉強と分析、
次の日の朝は何もなかったかのように朝ご飯の準備。
彼女は俺を努力の天才だと言ってくれたけど、
彼女の方がそれが当てはまる気がする。
普通バレーが好きのその気持ちで、
独学の勉強も資格もそこまでまっすぐなれるだろうか。
…今日も視線が彼女を追う。
昨日宣言したし、絶対今日はスパイクミスゼロ!
そう意気込んでいると、
「おいこら、祐真。俺の妹に堂々と手を出そうとするなよ?」
首根っこを健さんに掴まれる。
健さんは俺の先輩なんだけど、
親友みたいな距離感を許してくれる人で、頼れるし偉大なんだけど甘えてしまう人。
「…返したくなくなるってマジでした。健さんだめ?」
「…お前が本気になったら俺がダメって言っても聞かねーだろ。まぁ、相手は手強いぞ。なんせ不器用人間だし、決めたらとことんそれを貫くからな。」
健さんが嬉しそうに笑う。
本当、この人シスコンだな。
冗談はさておき、
「昨日の件どうなりました?」
「次回から合宿に呼ばないって監督が。…意見の対立とかじゃなく、普通に姿勢の問題だし妥当な判断だろう。」
あおを叩いた2人組のこと。