「あお、ここで終わっていいの。ねぇ、ここまで頑張ったんだよ?ここまで相手にも悟らせずにキラキラ輝いてコートを走り回ってきたんだよ?あと1試合、走り抜けないと、あおはバレーが嫌いになってしまう、だから、」
「…ん、すみ、ません、情けないとこ見せて…祐真さん、泣かないで。」
ゆっくり目を開けた、
あおが沸騰するくらい熱い手で俺の頬を触る。
「ごめんね、みんな、心配ばかりかけて。あと1試合だけ付き合って。祐真さん、叩き起こしてくれてありがと…」
「叩いてない」
「…もー、細かいなぁ。」
笑いながらゆっくり起きて準備を始める。
ハイになってるのか、
意識を途切らせないようにしてるのか、
あおはずっと話し続けてる。
多分、今この瞬間をオリンピックが終わった後は覚えてないと思う。
これはもう意識がない。
気力だけで何とか動いてる。
あおの足に視線を持っていくと左右で二倍くらい太さが違う。
おそらくシューズを履くのでさえ激痛。
色はもう、こういうの苦手な人は気分が悪くなるくらいに人間の肌とは思えない色。
昨日までのマイナスな気持ちを全部、
飲み込んで、
あと一日。
あおを全力で応援する。
後悔のないように。
あおのバレー姿を目に焼き付ける。