「…ゆ、ま、さ」
微かに、でも、はっきり聞こえたその声に、
俺たちは一斉に視線を向ける。
「あお!」
渉の静止を振り切って、あおの手を握る。
救急隊員の人もあおをタンカーに乗せながら、
あおの意識を確認してる。
「あお!あお!」
「…そんな、呼ばなくても、聞こえて、る。祐真さん、任せたから、ね。あと、あの子たちのことも、」
それだけ言ってまたスゥッと瞼を落とす。
任せたって何。
一緒に、って約束したじゃん。
あの子たちって何。
救急隊員の人が付き添いに一人だけ乗ってくださいと声をかける。
乗り込もうとすると、
いつから合流したのか、健さんに止められて、
リサちゃんがのって、あおが離れてく。
やだ、あお、行かないで。
手を伸ばして、追いかけようとすると、
「祐真!しっかりしろよ!」
健さんの声。
振り向くと、
健さんの迷いのない強い瞳が俺を捕らえる。
…健さんの瞳に映る俺、情けない顔。
ゆっくりと深呼吸する。
「…すみません、ありがとうございます。」
健さんはすごく困ったように、
「まぁ、俺もなんだけど。」
と返す。
ん、と健さんが俺に合図する。
健さんが指す方を見ると3人組の女。
カタカタと震えてる。
まさか。
「お前らが、」
「祐真、さっきの莉緒の言葉、わからないわけじゃないだろう。」
心のうちに一気に広がった憎しみの炎を、
健さんが宥める。
さっきの言葉。
『あの子たちのことも、』
あお、なんで許せるの?
なんで責めないの?
こんな酷いことされてんのに、
命に関わることなのに。
なんで、守ろうとするの。
俺には出来ないよ。
舌打ちをして、睨みつける。
本当ならぶん殴りたいけど、あおに免じて絶対それはしない。
けど、俺は許さないから。