「莉緒、少しいいか。」

休憩に入ったと同時くらいで、

渉と話し合いを始めていたら、

健くんに呼ばれる。

振り返ると、すごく複雑そうな顔をしているけんくらが目に入って、

少し不安になる。

監督が手招きしててそちらを向くと、

この前インタビューに来ていた女子代表のキャプテンさんと監督さん。

首を傾げつつ、

けんくんを改めてみると、

「莉緒、スカウト。」

けんくんがポツリという。

「え?」

どういうこと?

女子のデータ集めとか手伝うとか?

けんくんが戸惑う私の腕を掴んで、

その輪の中に連れて行く。

ついた途端お二人から自己紹介されて、

慌てて自分も自己紹介をする。

「蒼井莉緒です。よろしくお願いします。」

頭を上げたと同時に、

「女子代表にならない?」

という言葉が降ってくる。

「え。」

けんくんを見ると、

「…どうする。」

と返される。

「ちょ、ちょっと待ってください。代表のお手伝いってことですか?」

「ううん、リベロ。やらない?」

私は固まる。

えっと、私が?

なんの実績も残したことないけど…

いつも試合は県大会ベスト8くらい止まりだったけど…

少し落ち着いて状況を整理すればするほど、

「私じゃ…難しいと思います。」

「そんなこと言わないで。」

女子キャプテンがまっすぐに私をみつめる。

「私たちと世界を戦って欲しい。選手として。」

私たちと、ということは、

ここを去らないといけないってこと、だよね。