駅前の商店街よりも広い。三階にある映画館から地下の食品売り場まで、玩具からスポーツ用品までいろんな店が入っている。こんな中から、あの小さな玉を探すんだ。

「ね、朱里じゃない! こんなところで会うなんて~っ」

 満面の笑顔で近付いてきたのは、瑠璃菜だった。

 クシュクシュした淡い藤色のワンピースを着ていて大人っぽい。隣にいるのは、あのときプレゼントを渡していたサッカー部の先輩だ。

「瑠璃菜は、デート?」

「うん、今から映画観にいくの。女子高生の同居もの。あれ観に行くんだ」

 瑠璃菜は頬をピンクに染めて、嬉しそうにしている。

「付き合い始めたの?」

「まだ。今日は私が誘ったの。この映画を観て、先輩の気持ちを高めてもらうのが狙い。あと一息な感じなんだ」

 コショコショと耳打ちをしてくる瑠璃菜から、ふんわりといい匂いがしてくる。男子と一緒にいるときは、メイクしてコロンもつけるものなのかな。

 私は制汗スプレーしか使ったことがない。メイクの仕方も知らない。今さらだけど、女子力が低すぎる。これじゃあ彼氏なんか夢のまた夢だ。

「あ、映画が始まっちゃう。またね!」

「あ、うん。またね!」