「んー。理由は簡単なんだよ。高校に剣道部がないし、もうやりたくないから。それだけ!」
「そうは思えねぇな。初めて会った時、竹刀持ったお前は楽しそうだった。矢を向けた俺に向かってくる時も、恐怖もあっただろうが、ぞくっとするような良い目をしてたんだ。お前は気付いてないだろうが、さっきも、道場の方見る目が生き生きしてたぞ。そんなお前が――あー、いや。やっぱ、答えなくていい。何言ってんだ、俺は――行くぞ」
眉を歪めて前髪をクシャっとさせて、スタスタと歩き始めた。
アクマ天使が私の事情を聞いてくるなんて、珍しい。
気を遣っているような顔を見せてくれたのも。
不思議なことに、話を聞いて欲しいって思ってしまう。今まで、人に話すのを避けていたのに。
「――パパね、剣道のせいで死んじゃったんだ」
ぽつりと言うと、前を歩く背中がぴたりとまった。ゆっくりと振り返って、私を見る。
「剣道のせい?」
「うん。パパね、ナイフで刺されちゃったの。それも、ママの目の前で」
パパがお休みだった日、二人でデパートに買い物に行ったときに、それは起きた。


