俺様天使の助手になりまして


 アクマ天使を見る若先生の目が、遠くを見るように、すーっと細くなった。

「じゃ、朱里。今度来たときは、道場にも顔を出してくれよ」

「はい、若先生。じゃ、また」

「おう! またな!」

 ぺこっとお辞儀をし、手を上げてさよならをする。

〝また〟は、あるのかな。

 胸がちくんと痛む。子供たちの頑張るところを見ると、色々と思い出しちゃう。若先生と少し話しただけで、あのころを思い出したんだ。できれば、避けたい。

 アクマ天使に「行こ」って声をかける。
 
 若先生認定の良い男は、「藤松さん、失礼します」と言って、丁寧に頭を下げた。

 意外にも、本当に礼儀正しいのだ。私に対しては俺様なのに。

 ちょっとだけ、見直したかも。

 久々に道場を見たので気分が沈んで、胸の中がモヤモヤする。私が黙っているせいか、二人の靴音がやけに大きく聞こえる。

「ったく」

 前を歩いていたアクマ天使が急に止まって、くるんと振り返った。

「どうしたの?」

「お前、何で剣道しねぇんだ」

「どしたの、急に。何でそんなこと聞くの?」

「いや、ちょっと思っただけだ。答えたくなきゃ、別にいい」