「すごーい。メガネ男子に変わるところ、初めて見た。そういえば、目の色も変わるんだよね」

 思いっ切り背伸びをして、メガネの奥を見る。

 天使の時は藍色だけど、男子の姿になると黒になる。瞳はいつも清んでいて宝石みたい。

 アクマ天使全部の中で、唯一、素直に褒められるところだ。

 じーっと見ていたら、不意にデコピンされて後ろによろめいた。

「痛っ。いきなり何すんの?」

「見惚れんな。行くぞ」

「見惚れてないもん。見てただけだもん!」

「同じことだ」

 イヤなら口で言えばいいのに。

 額を摩りながら、すたすた歩き始めたアクマ天使の後を追う。

 もうちょっと優しく出来ないのかな。

 確かに剣道ができて、そこらへんの男子よりも強かったけど。男剣部の子を負かしちゃうこともあったけど。現役退いた今は、そんなでもないのに。

 女子力は超低いけど、これでもか弱い乙女のつもりだ。昨日少しだけ〝本当は優しいのかも〟などと思ったのは間違いだった。

 教会に行くには、学校とは反対方向にある隣街に向かっていく。溝の中や生け垣、あちこちに気を配りながら歩いた。

「あ、ここまで来るの、久々だあ」