それに目で「大丈夫」と返すと、コクッとうなづいて、

「はい、そうです」

と司会者に視線を移す。

「"真紅"とても人気な曲ですが、また作詞をされたりはしないのですか?」

「うーん、どうですかね。気分がのれば……」

「それは"真紅"のときはとても気分が乗っていたということなのでしょうか?」

「そうですね」

「差し支えなければ、どんな心境だったかなどお聞きしてもよろしいですか?」

その質問になんて返そうか少し考えて、それから社長を見ると俺の真意に気がついたのか社長がギョッと目を剥き慌てだした。


いつも自信満々でなんでも俯瞰的(ふかんてき)に落ち着いて物事を見ている社長の珍しい姿に、面白くなってたまらず口角が上がる。

社長がそうやって仁那の存在をこんな表舞台に示すなら、俺にも考えがある。



「あの時はー……、人生で一番嬉しいことがあって、こんな幸せなことがあるのかと、その嬉しさの勢いで"真紅"を書きましたね」