お前、俺を誰だと思ってんだ



「はぁ〜」




疲れた




「今日の女…」




「どっかでみたことあるんだよなぁ〜」




誰なんだよ…




…眠い





なんの手がかりもねぇ




寝るか…







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「ふふっ、かっこいい名前」






「わかるよ」






「同情してるわけじゃない」







「どうするかは蓮次第」









「いいよ」





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パチッ




「今の…夢、か?」




「誰だ…あの女」




「…」




俺が…今以上に荒れてた時か…




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蓮  中学3年生



「おい。お前が東堂蓮か」



「…」



こんな風に喧嘩を売ってくるやつばっか



俺を倒したら強くなれるとか、わけのわかんねぇこと言って喧嘩が始まる



別に喧嘩が好きってわけではねぇけど



やられっぱなしは嫌いだし、わざわざ殴られる理由もない



だから、殴りかかってきても避けたりさっさと終わらせるために蹴り飛ばしたり



中学3年の時もずっとそんな毎日だった



そんとき仲が良かったのは今と同じ奏と
海里(かいり)っていうやつ



中学3年の秋くらいだったか、



海里が人質にとられた



そんなドラマみたいなことあるわけねぇって
思ってた



スマホが鳴ったからみたら海里が眠らされてて椅子に縛られてる写真が送られてきた



ムカついた、



海里がいる場所は俺がいた場所から近かった



いそいで奏に電話してかけつけて、



海里を解放させた



でもすぐ敵がきて、海里も奏も強かったけど



海里はもうすでに何人もと戦っていて弱っている状態だった



2人で戦っていてもう少しのところで



海里が俺を庇った



大人数だったから時間はかかるし、中学生だから体力もなくなってきているとき



1人の男が鉄パイプなんか持ってきて、
俺に殴りかかった



俺は2人、3人を相手してたから気づいても
反応できなかった



そんなの言い訳にしかならねぇけど…



海里が最後の力を振り絞って俺の盾になってくれた



打ち所が悪かった



海里は頭から血なんか流して…



何回も海里の名前を呼んだ



誰もが動きを止めた



奏も何が起こったかわからず戸惑っていた



すぐに救急車を呼んだが間に合わなかった



医者はできること全てやったけどダメだったって



ダメだったってなんだよ



そんなこと言ったって思ったって海里は
戻ってこねぇ



わかってる、わかってるよ



くだらねぇことで若いうちに死ぬなよって
泣くことしかできなかった




奏は何度もお前は悪くないって言ってくれた




数日たって俺は全てがどうでもよくなって




海里を殺した敵のところにいった



「悪気はなかった」
「許してくれ」
「お前に怪我がなくてよかった」



はぁ?



誰が許すかよ




綺麗事ばっか言ってんじゃねぇよ




焦ってんじゃねぇよ




自分の仲間殺されて許す奴なんていんのか



そこで怒りが増して



そんとき自分が誰だかわかんなくなってて



もう覚えてもいない



気付いたらほとんどのやつが倒れてた



俺も所々怪我してた



ほんとにどうでもよくて、誰がどうなろうと
俺には関係ねぇって



全員ぶっ倒すまでは気がすまなかった



結局全員倒した



俺は帰ろうと思って歩き出した途端



立っていた女が目に入った



誰だこいつ



背は小さいが俺と同じくらいの歳か…?



「お仲間さん亡くなったんだ…?」



「…」



誰なんだよお前、何で知ってんだよ



みてたのか…?



こいつも俺を倒しにきたのか



弱ってるところを、か



「別に私はあなたを倒したりとかしないよ?」



「は?」




「てかさ」



「名前は?」



「は…」



「いや、話すのにあなたより名前の方が
 いいでしょ?」



「…」



意味わかんねぇ…




何しにきたんだよ



「いいからはやく」




「…蓮」



「蓮か、」



「ふふっ、かっこいい名前」



「中学3年生?」



俺は頷いた



「そっか」



「同い年だね」



同い年、か…



「で、蓮はこのあとどうするの?」



「しらねぇよ」




「きっとね、人を見るたびにムカついて
 いろんな人に傷つけると思うよ」



「は…?」



「蓮のお仲間さんは自分のために蓮に戦って
 ほしいとは思わないんじゃないかな」



なにいってんだ…



「もし私が誰かを守って死んだとしたら
 私のために戦ってほしいとは思わない」



「それに、守ったってことは生きてほしい
 ってことでしょ?」



「普通嫌いな人を守らないし本気で信じてる
 本気で好きって思ってる人じゃないと
 守らないと思うんだよね」



「蓮がもし誰かに八つ当たりとかしちゃい
 そうになっても自分を抑えてね」



「すっごく大変だし、辛いと思うけど…」



「そのときは…」



「お前に…なにがわかる」



なんなんだよ、急に現れて…



「…わかるよ」



「っ…」



なんだよその声…



なんなんだよ、その悲しそうな優しい顔は



「同情してるとかじゃない」



「ただこれ以上人を傷つけたら蓮も相手も
 苦しむことになるから」



「って話だけなんだけどね」



「どうするかは蓮次第」



「じゃ、私いくね」



は、もう行くのかよ



「まて!」




「ん?」



「名前」



「え?」



「お前の名前だよ」




「ん…」



「アリエ」



「あり、え…」



「珍しいでしょ」



たしかに俺の周りにそんな名前な奴はいない
聞いたこともない




ありえ、か




「ありえ」



「ん?」



「もうすこし…いてほしい」




「…ふふっ」




「いいよ」



ありえは俺のことを抱きしめた




あったけぇ…



安心する




こんなこと思ったのいつ以来だよ




親だって交通事故でいなくなったし



目からなにかが溢れてきた



は、おれ泣いてんの…




「いっぱい泣いていいんだよ」



「よくがんばったね、蓮」



これを言われた途端、蓋をしていたものが
とれたような感覚だった




今までこんなに泣いたことはない



そして俺はありえに抱きしめられたまま眠ってしまったらしい




いつのまにか自分の家にいて




家には奏がいた



「お、起きたか」



「奏…?」



「おう、どした」



「ありえは?」



「ありえ?」



「もしかしてあの電話の」



「電話?」



「ありえっていうやつかはしらねぇけど」



「お前のスマホから電話きて女の声だったんだよ」



「呼ばれたから行ったらお前寝てたし」



「その女いなかったし、とりあえずお前を
 家まで運んだんだよ」



「あ…わ、わりぃ」




「いーんだよ」



「海里のこともあったし…」



「2人で頑張ろうな」




「ん…」


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こんなこともあったな…




あれ以来俺は喧嘩はあんまりしねぇ




喧嘩はたまにするけどことを大きくしてない




ありえのおかげだ…




会いてぇって思うけどなかなか見当たらねぇ




いつか会えるといいなぁ…