「あんたが壊してよ。」



ぽつりと呟いた君の台詞に、僕はゆっくり振り向く。


悪戯っ子の様にニヤけているだろう想像とは裏腹に、君はまたあの寂しげな瞳をして、カーテンに隠れた窓をぼんやり見つめていた。



「気が向いたらね。」



今度はなるべく適当に、君の危険な思想をあしらいながら、



君の言葉はどこまで本当で、どこから嘘なのかが全く解らない。



と、僕は思っていた。



時々漏らす、ふわふわした実態の見えない言葉と、その時見せる寂しげな目の理由を僕はまだ聞き出せないでいる。


もしかしたら、触れてはいけない領域かも知れない不安と、そんな謎めいた所を楽しむ気持がそうさせているのかも知れない。


ただ、最近は、君が無理矢理にでもこの謎の理由を聞き出して欲しいのではないかと感じる事が多い。



「気が向いたらね…」



僕は、もう一度口の中で呟いて、カーテンの隙間から区切られた空を見つめた。