あまりに突然すぎるその出来事に、へ、と変な声が漏れる。
赤、紅、あか。
────ぐらり、目の前に座っていた多賀谷くんの体が傾く。
どさ、と人の倒れるその音に、ようやく我に返った。
「…た、がや…くん?」
視界が、赤く染まる。
これは…………血?
「な、んで…」
頭は未だに真っ白のまま、多賀谷くんを中心に、赤い液体が広がっていく。
──…ふと顔を上げると、そこには笑みを浮かべた壊れた機械が立っていた。
「…コれでミコは俺ノコト、見テくれる?」
『──俺、美恋からの愛情があれば壊れたりしないから』
そんな風に言って笑った、初めて会ったときの彼を思い出した。
────…じゃあ、私からの愛情がなくなったら彼は。
「ねえミコ、ドうシて泣いてるの?」
壊れたアンドロイドの喋り方はぎこちなくて、どこか薄気味悪くて。
「っどうして…何で、多賀谷くん…」
多賀谷くんの名前を呼べば、ゾッとするほど冷たい、アーモンドのような瞳が私を見た。
「……ドうしテミコは、俺ヲ愛しテくれナいの?」
彼の手に光るのは──────…あれは、ナイフ?
──…ああ、そこについている赤い点々は、きっと多賀谷くんの。
──…愛さなきゃ、彼を愛さなきゃ、私は殺される。
返品不可、と色々なところに書かれていたのを思い出した。
──つまり私は、ずっとこの壊れたアンドロイドを持ち続けなきゃいけなくて。
「────…愛してるよ、ソウくん」
絞り出した声は震えて、掠れて。
彼以外を愛すことは、許されなくて。
私は一生、【リソウカレシ】から逃げられないわけで。
──真っ赤な華が、地面を綺麗に染めあげていた。

