パッと顔を上げた彼──…多賀谷くんが、驚いたように目を瞬いた。
「え、何で。おまえさっき帰ったよな」
「うん。色々あって…」
──ああやっぱり、ソウくんといるより安心する。
「ふーん」
何となく言えない事情があることを悟ってくれたのか、多賀谷くんは詳しく聞き出そうとはしてこなかった。
興味なさげに相槌を打ってくれたあと、一瞬だけ私の方を見る。
「……何があったか知らないけど、俺的にはおまえに会えてラッキーだよ」
多賀谷くんの耳は、相も変わらず真っ赤っかだ。
かっこいいことを言ってくれてるのに、そーゆうところが何となく可愛らしくて笑ってしまう。
……好きだなぁ。
「…多賀谷くん」
──そう思った瞬間、いつもよりちょっとだけ固い声で、彼の名前を呼んでいた。
多賀谷くんが私を見て、ん?と首を傾げる。
さらりと短い黒髪が揺れて……私の理想じゃない、はずなのにな。
「────私──…」
口を開いた、その瞬間。
──真っ赤な華が、咲いた。

